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米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

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索引

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外国公開特許出願の国内公開

 1994年8月の日米包括経済協議知的所有権ワーキンググループ交渉において日本が付与後異議申立制度の導入などを行うことに対して米国における早期公開制度の採用が合意され、1999年法改正により実現されました(35 U.S.C. 122(b))。



国内公開の対象出願

 国内公開(patent application publication)の対象となるのは、2000年11月29日以降にされた米国出願です。但し、それ以前に出願された係属中の出願についても、出願人による請求により自発的に公開することができます(37 CFR 1.221)。

 一方、(a)係属していない出願、(b)秘密命令(secrecy order; 35 U.S.C. 181)の対象となる出願、(c)仮出願、(d)デザイン特許出願、(e)非公開の請求がされた出願、の各出願については公開されません(35 U.S.C. 122(b)(2)(A), 37 CFR 1.211(a),(b))。

 ここで、「非公開の請求」は、18ヶ月公開制度を採用する他の国に出願しないことを条件として、国内公開されないことを出願人が請求できるものです(35 U.S.C. 122(b)(2)(B), 37 CFR 1.213)。この非公開の請求は出願の際にされる必要がありますが、出願人はその後いつでもその請求を撤回することができます(同上)。また、非公開の請求をした出願人がその後18ヶ月公開制度を採用する他の国に出願した場合には、45日以内に特許商標庁にその旨を知らせなければならず、これを遵守しなればその出願は放棄されたものとみなされます(同上)。

国内公開の時期

 国内公開は、最先の優先日(earliest filing date for which a benefit is sought)から18ヶ月経過後に行われます(35 U.S.C. 122(b)(1)(A), 37 CFR 1.211(a))。但し、出願人は18ヶ月経過より早期の公開を要求することができます(35 U.S.C. 122(b)(1)(A), 37 CFR 1.219)。また、一度公開された出願について再公開を要求することもできます(37 CFR 1.221)。  なお、出願料、英語以外の言語で出願された場合における翻訳、および、宣誓書等または出願データシートは、出願日より後に提出される場合がありますが、これらが提出されるまでは、国内公開は行われません(37 CFR 1.211(c))。

国内公開の対象項目

 国内公開は、出願時の出願の内容や、出願日を維持するために提出された他の出願書類に基づいて行われます(37 CFR 1.215(a))。実際の出願日から1ヶ月もしくは最先の優先日から14ヶ月の何れか遅いときまでに、補正内容を盛り込んだ出願内容のコピーを提出した場合には、そのコピーに基づいて公開されます(37 CFR 1.215(c))。

 また、他の国に出願された内容が米国出願の内容よりも狭い場合には、出願人は当該他の国に出願された内容に含まれない事項を削除した編集明細書(redacted copy)を提出することができ、これが優先日から16ヶ月以内に特許商標庁に受け取られたときには、出願時の明細書に代えてその編集明細書が公開されます(35 U.S.C. 122(b)(2)(B)(v), 37 CFR 1.217)。

国内公開のための手続

 国内公開のために必要な公開費は、遅くとも特許許可通知から3ヶ月以内に支払わなければなりませんが(37 CFR 1.211(e))、2014年1月1日以降は「無料」に減額されています(37 CFR 1.18(d)(1))。但し、自発的公開や再公開を請求する場合には、手数料(37 CFR 1.17(i))をその請求と同時に支払わなければなりません(37 CFR 1.221)。

 なお、編集明細書による公開(37 CFR 1.217)、補正明細書による公開(37 CFR 1.215(c))、自発的公開または再公開(37 CFR 1.221)を請求する場合には、それらの明細書を電子出願システム(EFS-Web)により提出しなければなりません。

国内公開の効果

仮保護の権利(Provisional Rights)

 国内公開がされた場合には、公開から特許発行までの間の実施料相当額(reasonable royalty)を受ける権利が発生します(35 U.S.C. 154(d))。但し、公開された出願について相手方に対して実際に通知(actual notice)をしていなければなりません(35 U.S.C. 154(d)(1)(B))。また、特許時にクレームされている発明が、公開時にクレームされていた発明と実質的に同一でなければなりません(35 U.S.C. 154(d)(2))。従って、補正によりクレームが変更された場合、補正後のクレームにより仮保護の権利を行使するためには、再公開(37 CFR 1.221)を請求する必要があります。

 なお、この仮保護の権利を行使できるのは、特許が発行されてから6年以内に限られます(35 U.S.C. 154(d)(3))。

刊行物等の提出(Preissuance Submissions by Third Parties)

 国内公開がされると、情報提供(protest; 37 CFR 1.291)をすることができなくなります(35 U.S.C. 122(c))。

 その代わり、国内公開がされた出願について、第三者は審査官に刊行物等の提出をすることができます(35 U.S.C. 122(e))。この提出ができる時期は、許可通知前、かつ、国内公開後6ヶ月または最初の拒絶通知の何れか遅い日までです(35 U.S.C. 122(e)(1))。なお、国際公開は、ここにいう国内公開に該当しません(37 CFR 1.290(b)(2)(i))。

 刊行物等の提出をする際には、簡潔な説明(concise description)を提出する必要があります(35 U.S.C. 122(e)(2)(A))。費用は10文献毎に課されますが(37 CFR 1.290(f)、1.17(p))、最初の3文献までは無料です(37 CFR 1.290(g))。

先行技術(prior art)

 国内公開された出願は、米国出願日に遡って他の出願の先行技術になります(35 U.S.C. 102(a)(2))。すなわち、米国出願日と国内公開との間にされた他人の発明について当該他人が出願をしても、その出願は102条(a)(2)により拒絶されます。なお、当該他人の出願が国内公開後にされた場合には、その出願は102条(a)(1)によっても拒絶されます。

pub.txt · 最終更新: 2016/10/24 11:14 by marushima