ユーザ用ツール

サイト用ツール


サイドバー

米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

USPTO fee schedule

索引

102b

102条(b)

 102条(b)は、特許要件の例外(exceptions)を規定しています。102条(b)(1)は、102条(a)(1)の例外規定です。102条(b)(2)は、102条(a)(2)の例外規定です。


35 U.S.C. 102
"(b) EXCEPTIONS.-
(1)DISCLOSURES MADE 1 YEAR OR LESS BEFORE THE EFFECTIVE FILING DATE OF THE CLAIMED INVENTION.-
A disclosure made 1 year or less before the effective filing date of a claimed invention shall not be prior art to the claimed invention under subsection (a)(1) if-
(A) the disclosure was made by the inventor or joint inventor or by another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor; or
(B) the subject matter disclosed had, before such disclosure, been publicly disclosed by the inventor or a joint inventor or another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor.
(2) DISCLOSURES APPEARING IN APPLICATIONS AND PATENTS.-
A disclosure shall not be prior art to a claimed invention under subsection (a)(2) if-
(A) the subject matter disclosed was obtained directly or indirectly from the inventor or a joint inventor;
(B) the subject matter disclosed had, before such subject matter was effectively filed under subsection (a)(2), been publicly disclosed by the inventor or a joint inventor or another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor; or
(C) the subject matter disclosed and the claimed invention, not later than the effective filing date of the claimed invention, were owned by the same person or subject to an obligation of assignment to the same person."


102条(b)(1)

 102条(b)(1)は、102条(a)(1)の例外規定です。有効出願日から遡って1年以内の開示(disclosure)については、102条(a)(1)における先行技術にならない旨を規定しています。有効出願日から遡った1年の期間はグレースピリオドであり、この期間内であれば102条(a)(1)の公用等に該当しません。

 この102条(b)(1)で例外適用となる開示については、102条(b)(1)(A)および102条(b)(1)(B)に規定されています。

102条(b)(1)(A)

 102条(b)(1)(A)は、開示行為が発明者等によりされたものであれば、102条(a)(1)における先行技術にならない旨の例外規定です。発明者等には共同発明者も含まれます。また、発明者から直接的または間接的にその発明対象を知得した他人による開示行為も、この例外規定に含まれます。  このグレースピリオドにおける先開示を陳述するための記載を、明細書中に設けることができます(37 CFR 1.77(b)(6))。出願の発明者等と比べて先開示に追加的著者が存在せず、他の証拠もなければ、先開示は発明者等によりされたことが明らかであるとして審査されます(MPEP §2153.01(a))。また、出願人は、宣誓供述書(affidavit)または宣言書(declaration)を利用して先開示を立証することができます(MPEP §2153.01(a))。

102条(b)(1)(B)

 102条(b)(1)(B)は、開示された発明対象が既に発明者等により公に開示されていたものであれば、102条(a)(1)における先行技術にならない旨の例外規定です。すなわち、いったん公に開示された発明対象については、その後に繰り返し開示されても例外適用には影響しません。なお、ここでも、発明者から直接的または間接的にその発明対象を知得した他人や、共同発明者も、発明者等に含まれます。  出願人は、宣誓供述書(affidavit)または宣言書(declaration)を利用して例外適用を立証することができます(MPEP §2153.02)。

 但し、この例外規定の適用にあたっては、発明対象の同一性に留意する必要があります。発明対象の同一性がない場合には、この例外規定は適用されず、102条(a)(1)の先行技術に該当します。但し、開示の態様(刊行物、公用、販売行為など)は同一でなくてもよく、また、一字一句同じ(verbatim or ipsissimis verbis)でなくても発明対象の同一性は許容されます(MPEP §2153.02)。

 グレースピリオドにおいて、単により一般的な表現により開示されたものであれば、この例外規定が適用されますので、そのような開示は102条(a)(1)の先行技術には該当しません(MPEP §2153.02)。例えば、最初に実施例レベルのspeciesを開示して、グレースピリオドにおいて一般的なgenusを開示しても、そのgenusの開示は先行技術には該当しません。一方、最初に一般的なgenusを開示して、グレースピリオドにおいて実施例レベルのspeciesを開示した場合には、そのspeciesの開示は先行技術に該当します。また、最初にあるspeciesを開示して、グレースピリオドにおいて他のspeciesを開示した場合には、当該他のspeciesの開示は先行技術に該当します。

102条(b)(2)

 102条(b)(2)は、102条(a)(2)の例外規定です。この102条(b)(2)で例外適用となる開示については、102条(b)(2)(A)、102条(b)(2)(B)、102条(b)(2)(C)に規定されています。

102条(b)(2)(A)

 102条(b)(2)(A)は、開示された先願の発明対象が発明者等から直接的または間接的に知得されたものであれば、102条(a)(2)における先行技術にならない旨の例外規定です。すなわち、発明者等から知得した発明対象を第三者が先に特許出願した場合に、その出願は102条(a)(2)の例外となり、先行技術から除外されます。  出願人は、宣誓供述書(affidavit)または宣言書(declaration)を利用して例外適用を立証することができます(MPEP §2154.02(a))。

102条(b)(2)(B)

 102条(b)(2)(B)は、開示された先願の発明対象が、先願の出願前に発明者等によって既に公に開示されていたものであれば、102条(a)(2)における先行技術にならない旨の例外規定です。すなわち、いったん公に開示された発明対象については、その後に第三者が先に特許出願しても先行技術になりません。なお、ここでも、発明者から直接的または間接的にその発明対象を知得した他人や、共同発明者も、発明者等に含まれます。  出願人は、宣誓供述書(affidavit)または宣言書(declaration)を利用して例外適用を立証することができます(MPEP §2154.02(b))。

 但し、102条(b)(1)(B)の場合と同様に、発明対象の同一性には留意する必要があります(MPEP §2154.02(b))。

102条(b)(2)(C)

 102条(b)(2)(C)は、開示された先願の発明対象と後願でクレームされた発明とが、後願の有効出願日までに、同一人に所有されていたのであれば、102条(a)(2)における先行技術にならない旨の例外規定です。所有まで至らなくても、同一人に対して譲渡する義務があれば、この例外が適用されます。

 共同研究契約に基づく成果については、以下の3つの条件を満たすときに、この102条(b)(2)(C)の例外規定が適用されます(35 U.S.C. 102(c))。
(1) 後願の有効出願日までに締結された共同研究契約の当事者によって、先願の発明対象の開発、および、後願の発明がされたこと
(2) 後願の発明が共同研究契約の範囲内の活動成果として得られたこと
(3) 共同研究契約の当事者の名称が後願において開示され、または、開示されるように補正されたこと

 この例外適用を受けるためには、出願人による明確ではっきりした(clear and conspicuous)陳述があれば十分であり、譲渡書の写し等の証拠までは要求されません(MPEP §2154.02(c), §717 III.)。

102b.txt · 最終更新: 2015/09/29 10:57 by marushima